地産地消の再エネ電力を
店舗に家庭に、そして農家に
森 ゆかり さん
生活協同組合コープさっぽろ組織本部 広報部 広報メディアグループ グループ長 1980年、福岡県生まれ。2022年、生活協同組合コープさっぽろに入協。2024年4月より現職。
森 ゆかり さん
生活協同組合コープさっぽろ2016年に電力の小売が完全自由化*1されることを踏まえ、前年の2015年に生活協同組合コープさっぽろグループの電気事業を担う会社として設立されたのが、株式会社トドック電力です。提供する電力は、当初から環境配慮型にこだわり北海道内で発電されたもので、なおかつ、太陽光や風力など環境に負荷をかけない再生可能エネルギー(以下「再エネ」という)によるものという、この2つを条件としました。さらに、販売先は道内に限定しており、再エネ電力の地産地消を進めています。再エネ電力の供給先は、2024年現在で一般家庭約45,000件、法人約150社・480施設に及び、あわせて、コープさっぽろの約100店舗(うち札幌市内29店舗)にも導入しています。
従来から木質バイオマスを中心とした再エネ発電所と提携し、調達していましたが、使用量が非常に大きい店舗向けの電力を自分たちでもつくろうと、2023年に太陽光発電所の建設に着手しました。50kW未満のコンパクトな低圧発電所を道内200カ所に設置する予定で、2024年10月末現在で49カ所が稼働し、200カ所すべてが稼働した際(2025年9月末予定)には全店舗で使用する電力の14%をまかなう見込みです。
*1:電気は、各地域の電力会社が供給し、その料金は、法律で定められた方法により決定されていましたが、2016年4月から電力の小売が全面的に自由化され、電気の売り手やサービスを自由に選べるようになりました。
200カ所の太陽光発電所を建設した次の段階についても模索中で、太陽光・風力・地熱・水力などのうち、最も環境にやさしく効率的なエネルギーは何かを研究中です。
太陽光発電についていえば、北海道は積雪があるため向かないと思われる方も多いようですが、コープさっぽろでは地面から1.5メートル程度の高さで角度40度にパネルを設置し、雪が積もることなく滑り落ちるようにして冬でも発電量が低下しないような工夫をしています。最も効率よく発電できる角度は30度とされていますが、この場合はパネルに雪が積もってしまい積雪時は発電できないため、年間で見ると発電量に大きな差はありません。
コープさっぽろではこうして培ってきた経験を生かし、農地に太陽光発電設備を設置して太陽光を農業生産と発電を同時に行うことができる、営農型の太陽光発電にも今後取り組みたいと考えています。この営農型の場合は、両面受光型のパネルを東西に向けて地面に対して垂直(90度)に設置することから、一般的にパネルを南向き・30度に設置した場合と比べて発電効率こそ落ちますが、日が昇って沈むまで発電することができます。営農型の実現に向けては、農地を太陽光パネルの設置に使う一時転用の許可など農地法に基づくさまざまな規定があります。コープさっぽろではこうした法規制への対応を含めて、親しくさせていただいている農家のみなさんとお話をしながら進めていけたらと考えています。
話は戻りますが、2015年のトドック電力設立時から活用させていただいているのが、細かく砕いた木材チップを利用する木質バイオマス発電所の電力です。2021年4月には再生可能エネルギー100%メニュー(FIT電気*2+FIT非化石証書*3)の体制を実現し、ご家庭にも提供しています。木質バイオマスによる発電では、木の成長を促すために伐採された間伐材などを使うため、未利用資源の活用や二酸化炭素を吸収する森林の整備に役立つなど環境面で非常に意義があると考えています。
コープさっぽろでは、木質バイオマスのような再エネによる電力をお届けすると同時に、脱炭素に向けて省エネにも貢献したいと考え、2024年11月1日からトドック電力をご契約いただいている組合員のご家庭向けに「トドでんAI(アイ)」という無料サービスを開始しました。これは、冷暖房・冷蔵庫・照明・待機電力・その他の5種類について、何にどれくらい電力を使ったかをAIを活用して「見える化」するもので、電力の使い方を認識し、節電につなげていただこうというものです。特別な器具は不要で、スマートメーターによって示される電力の波形からAI技術で使用状況を推定、最短で翌日にはマイページでご確認いただけます。
生活協同組合として、道民のみなさまに本当にいいものを提供したい。その思いで今後もさまざまなことに取り組んでいきたいと考えています。温室効果ガスを出さず、地域のエネルギー自給率の向上につながる再エネ電力の普及を、これからも推し進めてまいります。
*2:FIT(固定価格買取制度)とは、再エネで発電した電気を、電力会社が一定価格で一定期間買い取ることを国が約束する制度のこと。この制度によって電力会社に買い取られた電気を「FIT電気」といいます。
*3:非化石証書とは、化石燃料以外のエネルギーで発電された電気の「環境価値」を売買するために証書にしたもの。このうち、FITの適用を受ける再エネを由来として発電された電気の「環境価値」を証書にしたものを「FIT非化石証書」といいます。
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