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視点①アナウンサーの立場から
以前はなかった「命を守るための行動を」という呼びかけ

2013年に気象庁が特別警報の運用を開始しました。特別警報は、大雨や大雪、暴風、暴風雪などによる重大な災害が起こる恐れがある時に発表されますが、テレビでは「数十年に1度しかないような非常に危険な状況です。命を守るための行動をしてください」と呼びかけるようになりました。この呼びかけは、私がアナウンサーになったばかりの20年前にはなかったものです。

ANN系列(テレビ朝日系列)ではアナウンサー陣で勉強会を開き、よりよい呼びかけ方について学んでいます。どんな言葉を使って、どのような声のトーンで伝えたら、「身を守る行動を取らなくちゃいけない」と視聴者の背中を押せるのか。勉強をしながら、まだまだ悩んでいる最中です。

令和6年7月23日からの大雨による深川市多度志周辺の浸水被害
出所:国土交通省北海道開発局札幌開発建設部

視点②防災士の立場から
いざという時に機能する防災備蓄の考え方

4人家族で140個の携帯トイレは大変! だから…

防災士の知識を利用して「防災おはなし隊」という活動をしています。オリジナルの紙芝居を作って、イベントなどで自然災害への注意喚起や備えの大切さを伝えています。

例えば携帯トイレはいくつ用意したらいいか。1日の排泄回数は個人差もありますが5回ほどと言われ、NPO法人 日本防災士会では「防災備蓄は7日分」を推奨しています。単純計算すると1週間で1人35回分、2人家族だと70回分、4人家族だと140回分。140個用意するのは大変なので、代用品としてペット用のシートを紹介しています。

ペットシートをポリ袋に入れ、その上に新聞紙などをちぎって入れると汚物も目立ちませんし、ペットシートは吸水性・防臭性が非常に高いので、バケツやトイレなどで使うといいと思います。ペットを飼っていない方も用意されてはいかがでしょう。

イベントなどで、オリジナルの紙芝居を使いながら「防災おはなし隊」としての活動も行っています。 ©HTB
400枚入りで2,000円など安価で、吸水性・防臭性に優れているペットシート。

「フェイズフリー」をご存じですか?

フェイズは災害時と日常時の境目で、これをフリー=無くすという意味で、普段使えるものを、いざという時に使えるように準備しておくということです。普段からよく利用する缶詰やカップ麺、レトルト食品などをストックし、使ったら買い足す。災害時用に用意したものはしまい込みがちで、いざという時に使えない、使い方がわからないということも起こります。

また、出かける時にはカバンの中に飴やチョコレートなど、お腹を軽く満たせるものを入れておくといいでしょう。ウェットティッシュや冬場ならカイロ、赤ちゃんがいる場合はオムツを余分に持ち、お子さんが好きな小さなおもちゃなどをカバンに入れておくと、バスや電車の中で長時間過ごさなければいけない時に役立ちます。

視点③親の立場から
一時避難や助けの求め方を親子で確認

大雪による交通障害などの時にどう行動するか、家族で確認しています。通学路上で一時避難できる場所はどこか、子どもが一人で地下鉄に乗っていた場合は周りの人に助けを求めながら行動できるように、などです。

助け合うという点で、町内会はとても大切だと感じています。地域のお祭りなどに行くと顔見知りが増えます。いざという時にお互いに声かけができるなど、小さな単位で助け合える体制をつくっておくことも大切だと思います。

視点④ジェンダーギャップに取り組む立場から
防災や避難所運営に、もっと女性の声を届けたい

女性が災害時に被害を受けやすいという現状

子どもたちと同様に、女性が自然災害などで被害を受けやすいことは世界各地の事例や研究でも明らかです。そしてその原因として指摘されるのが、女性という性別による結果ではなく、社会や経済、政治的に形成されたジェンダーの構造や格差です。

例えば、女性は災害時に子どもや高齢者をケアする立場にいるため避難が遅れる。また、食料や水の不足など不便を強いられるストレスのはけ口が、DVなど女性に向かうケースが増えているとも指摘されています。

よりよい防災・避難所運営のために

避難生活では男女共にトイレの問題が出てきますが、特に女性は衛生面を気にしてトイレに行く回数を減らす傾向にあります。そのため水を飲む回数が減って体調を崩す、あるいはエコノミークラス症候群*1になりやすいといった事例が多くあります。

*1:食事や水分を十分に取らない状態で、狭い場所に長時間座って足を動かさないでいると、血行不良から血液の固まり(血栓)ができやすくなり、それが肺に詰まって肺塞栓を誘発する恐れがあります。参考資料/エコノミークラス症候群の予防のために(厚生労働省)

こうしたことも理解した上での避難所運営が求められますが、防災担当に女性が参画している例が少ないというのが全国的な現状です。一方で札幌市など、女性の参画を推進する自治体もあり、その動きが進んで女性がもっと防災や避難所運営に加われるといいなと思っています。

社会のしくみを変えるのは個人レベルのアクションからだと思います。その中で忘れていただきたくないのがジェンダーの視点です。ジェンダーのことも頭の隅に置きながら、環境やまちづくりに対して自分ができることを一つひとつ積み重ねていけたらいいなと感じます。

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