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コミュニティバスから新しい運行形態へ

じょうてつ(株)は、2016年2月から札幌市南区の藤野地区を循環する中型のコミュニティバス「ふじの〜る」を運行し、住民の皆様にご利用いただいていました。しかし年々利用者が減り、コロナ禍の影響もあり継続運行が難しくなったことから、藤野地区連合町内会と代替手段について協議を重ねるなか、すでに手稲地区で実施しているデマンド交通(※)のような運行形態はできないかとの要望があり、札幌市と連携して2年間の実証運行を行うことになりました。 2023年9月1日から札幌市で2番目となるデマンド交通「チョイソコふじの〜る」をスタートし、地区内に40ヵ所(2024年9月30日から45ヵ所に拡大)設けた乗降場所で、乗り合い送迎サービスを行っています。運賃は大人350円、SAPICAなどの交通系ICカードや敬老パスが使えることも特徴です。 ※デマンド交通:従来の路線バスとは異なり、運行ダイヤ・ルートが決まっておらず、予約があったときのみ、事前に設定した乗降場所(停留所)間を運行する方式の交通システムのこと。

「チョイソコふじの〜る」の運行イメージ
定員8名のワゴン型車両はバスよりも小回りがしやすく、道幅の狭いエリアでも運行が可能

「地域の足」として、高齢者の外出を支える

利用には事前の会員登録(無料)が必要で、開始から約1年が経過し、会員数は約700名(2024年9月時点)と多くの方々に関心を寄せていただいています。会員の約7割が70代以上で、高齢になって運転免許を返納された方や、マイカーを持たない方などが、買い物、通院、銀行や郵便局へ行くときに多く利用されています。
以前のコミュニティバスと比べて運行エリアが広がり、ドアツードアとまではいきませんが、比較的リーズナブルな価格で、行きたい場所まで希望の時間に乗車できることが大きな利点だと思います。また、藤野地区は坂道が多く、足が不自由で歩くのがたいへんな方から感謝の言葉をいただくこともありました。
私たちのようなバス会社が地域のデマンド交通を担うケースは全国でもめずらしいそうですが、通常の路線バス、中型のコミュニティバス、小型のデマンド交通と、運行形態をその時々に合うものに転換し、新しい技術を取り入れて進化しながら、今後も「地域の足」としての役割を果たしていきたいと考えています。

「チョイソコふじの〜る」の運行エリアマップ

脱炭素社会につながるデマンド交通

公共交通機関存続の手段として始まった「チョイソコふじの〜る」ですが、もう一つ、私たちが取り組みの重要性を感じているのが、環境問題、脱炭素化への貢献です。マイカーではなく、バスや電車などの交通機関を利用することはCO2排出量削減につながりますが、さらに必要なときだけ乗り合いで運行する小型車両のデマンド交通は、CO2排出量削減と燃料(エネルギー)の使用量削減に直結しています。

旅客輸送において、各輸送機関から排出される二酸化炭素の排出量を輸送量(人キロ:輸送した人数に輸送した距離を乗じたもの)で割り、単位輸送量当たりの二酸化炭素の平均的な排出量を試算すると上図のようになります。
出典:国土交通省ウェブサイト
https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/environment/sosei_environment_tk_000007.html

また、今後は新しい技術を取り入れた車両の導入など、どのような運輸事業を展開していくことが持続可能な社会の実現につながるのか、検討や実証を続けていきたいと考えています。 こうした貢献は、もちろんご利用いただく乗客の皆さんのご協力なくしては実現できません。現在「チョイソコふじの〜る」の利用者は1日平均20人ほどで、利用者数を増やすことが一番の課題となっています。
普段あまり意識されることがないかもしれませんが、運転免許を返納したり、マイカーをちょっとお休みしたりして、「チョイソコふじの〜る」に乗ることも、実は、身近な生活の中で、脱炭素につながる大切な一歩です。その一歩を安心して踏み出していただけるように、これからも、大きな視点で環境問題にも貢献できる事業として着実な運行を続けたいと思います。

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