自然とふれあい、いろんなことを学んで、感じるところから
「この自然を守っていきたい」と思うことが大事
髙梨 沙羅 さん
スキージャンプ選手 上川町出身。FIS(国際スキー連盟)ワールドカップでの4度の総合優勝など、数々の偉業を成し遂げる一方で、「JUMP for The Earth PROJECT」を立ち上げ、 自然環境を守るために精力的に活動している。髙梨 沙羅 さん
スキージャンプ選手 上川町出身。FIS(国際スキー連盟)ワールドカップでの4度の総合優勝など、数々の偉業を成し遂げる一方で、「JUMP for The Earth PROJECT」を立ち上げ、 自然環境を守るために精力的に活動している。
4年ほど前から欧州の拠点をスロベニアに置いてトレーニングを続けています。住んでいるのはウインタースポーツが盛んな小さな町で、リゾート地ではありますが、地域の中での助け合いが感じられる場所です。
こちらの方はだいたい畑を持っていて、作物ができると近所で交換し合い、自然に「地産地消」がなりたっているように感じます。「環境に良いことをしよう」としているわけではなく、環境に配慮した暮らしが子どもの頃から自然に身について、だんだん大人になっていく、というサイクルが繰り返されているようにも思います。
近年、雪不足で試合が中止になったり、シーズン初めにトレーニングができなかったりというところから、地球温暖化など環境問題について危機感を感じるようになりました。いろいろな方の講演を聞いたり、自分で勉強したりする中で、「50年後、100年後、次の世代の子どもたちにも自然の雪の中でスキージャンプ競技をしてほしい。すばらしい自然環境を残したい」という想いが強くなり、2023年5月に「JUMP for The Earth PROJECT」を立ち上げました。
環境問題に取り組むには一人の力ではどうにもならないことが多く、本当に周りの人たちの助けがあって始まったプロジェクトです。また、だからこそ、私たちスポーツアスリート、子どもたち、地域の方々、企業の方々とともに活動を推進したいと考えています。一緒に自然とふれあい、その良さを知り、いろんなことを学んで、感じるところから、「この自然を守っていきたい」と思うことが一番大事だと思っています。
2023年10月、札幌の藤女子高等学校の生徒さんと一緒に、自然環境を守るためのワークショップを開催しました。札幌の大倉山や宮の森のジャンプ競技場で、何かできることはないかと始まった企画です。
藤女子高等学校の生徒さんは長年環境活動を続けていて、札幌についても詳しいので、いろいろなことを学ばせていただき、意見交換しながら「スポーツイベントでできること」を話し合いました。ジャンプ競技を観戦した経験がある生徒さんが1人もいなかったので、固定概念が全くない中で、面白いアイデアがたくさん出てきました。
2024年1月のワールドカップ札幌大会で、このワークショップから出たアイデアの一つ、無料で給水できる「マイボトルバー」を実現できました。大倉山ジャンプ競技場にブースを出し、マイボトルを持参した約300名の観客に温かい飲み物を提供したほか、衣類のハギレを使って缶バッチを作るワークショップなども行い、小さなお子さんも楽しみながら環境について学べる場になったと思います。
今回の活動で、若い皆さんが一生懸命、環境問題に取り組む様子を見て「私ももっと頑張らなきゃいけない」と思いました。また、一人ひとりのアイデアがとても新鮮で、「そういう視点で見たことがなかった」という気づきが多くありました。
マイボトルを持ち歩く習慣は、使い捨てペットボトルの削減につながり、私たちがすぐできるアクションの一つです。そうしたことを知っていただく機会として、今後も続けたいと思います。
環境問題について学ぶ場が多くなることで、「普段の生活で気をつけられる部分がたくさんある」と気づけると思います。また、みんなで取り組むことによって環境に配慮する輪が広がると思いますし、そうなることを目指しています。
より大きな目標としては、ジャンプ競技場を運営するエネルギーを再生可能エネルギーに切り替えることや、駅からジャンプ台を往復するバスをバイオ燃料に切り替えることに向けて、取り組んでいけたらと思っています。ジャンプ台までの交通機関は、大勢が相乗りすることでエネルギーを最小限に抑えられ、みんなで楽しみながら来てもらえるのが理想です。
言葉にするのは難しいのですが、スキージャンプの魅力の一つは、たった2本のスキーで「空を飛べる感覚」が体感できるところだと思います。
かけがえのない雪山の自然環境を、次世代に残していくために。
そして、スノースポーツの素晴らしさを、次世代に伝えていくために。
これからも多くの皆さんと一緒に、一歩ずつでも前に進みたいと思っています。
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